シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
案の定、櫂の姿を見て…更に煌と桜ちゃんを見て。
通学中の桜華生が歓声を上げて蕩けだした。
「誰!!?」
「あんな人居た!!?」
「あれ、桐夏の…紫堂さんじゃない!!?」
「如月さん!!?」
最後には、何で!!?ばかりを繰り返す女生徒達。
それが訊きたいのはあたしの方。
どうして正当なる桐夏生が、桜華の制服着て通学するんだ。
そう思えばこそ、追撃弾のように…朝からこの甲高い声を浴びせられた身としては、気分は下降一直線を辿るばかり。
櫂が正門に近付くと、ざわめいて膨れあがっていた集団が、櫂達に見とれて、2つに割れた。
そしてその先に居たのは女生徒。
すらりとした…とびきりの美少女。
白い頬に、赤い唇がやけに扇情的で。
しかしその美貌は、あくまで控え目で。
長い黒髪を耳にかけ、優雅に佇む…気品を感じさせるその物腰。
どこぞの良家のご令嬢?
凄い。
あたし…ときめいてきちゃったかも。
美少女は櫂に気付き…そして何と微笑んだ。
ばたばたと倒れる男子生徒続出で。
そして櫂も…彼女に微笑んだ。
今度はばたばたと倒れる女生徒続出で。
「なあ…あれ」
由香ちゃんがわなわなと唇を震わせて。
どうしたのかと由香ちゃんを見ている間に、櫂は美少女に近付き、ほっそりとした白いその手をとって。
「さあ…行こうか」
傅(かしづ)くように身を屈め、唇を寄せた。