シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「はろはろ~」
手をひらひらさせ、嘘臭い笑みを顔に張り付かせた男。
青いスーツ、青いワイシャツ、青いネクタイ。靴まで青い。
胡散臭さ丸出しなのに、違和感無いのは存在自体が胡散臭いからだろう。
どこまで自分を誇示させたいんだ、この男。
しかしその姿…。
お前…ホストかよ?
「それとレイチャン、振込みありがと☆ ATMじゃなくネット振込みなんて、洒落てるぅ~。俺、アナログ人間だからさ~。裏口座としてネット口座使って、がっぽりお金貯るって発想ないもんな~。あはははは~」
玲の顔が引き攣っている。
「電気が不通になったらネット口座は閉鎖? 個人情報漏洩は大丈夫? お金は勝手に引き出されたり止められたりしない? 俺、そういうの怖くてさ~。あはははは~」
んなもの、玲ならとっくに対策済みだと判っているくせに、何一つ怖くなんか思ってねえくせに、やたら"あはははは~"。
ふと思った。
玲…あんな大金すんなり振込めるほど、ネット口座に金が貯まっているのか?
副業で幾ら稼いでいるんだ?
「そんなことより。美人だね、レイチャン。カイクンとすっごくお似合い。美男美女」
瞬間、櫂と玲が顔を見合わせて、何度も頷く芹霞を一瞥すると、凄く嫌な顔をした。
「黒色ワンワンも芹霞ちゃんとお似合い。8年も同棲しているんだし、もういい加減くっついちゃえば?」
思わずぱっと顔を輝かす俺の前で、芹霞が拗ねた櫂に浚われた。
俺は…玲に脛を蹴られた。思い切り。
「それから、火事は災難だったね~、あ、だけど俺の私物は無事だったからご心配なく」
誰もお前の私物の心配なんかしてねえってのに。
いっそ跡形も無く燃えて欲しかったのに。
つーか、氷皇…確認にマンション行ったのかよ。
「まあまあ、立ち話もなんだし…中に入ったら?」
促されたのは『理事長室』
そのドアは青色で。
もう判るだろう。
「桜華にようこそ。
報告して貰うよ、今の段階」
理事長たる氷皇は笑った。