シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
理事長室は、見事に冷たい青一色だ。
青いソファにふんぞり返り、氷皇は愉快そうに櫂と玲の報告を聞いている。
理事長なら、もったいぶらないで最初からそう紙に書いておけばいいのに。
つーか、俺らが何でこんな格好までしてお前に会いにいかねばならねえんだ?
それに。
何となくだけれど…。
俺達がどんな報告をするのか、もう既に判っていたんじゃ?
或いは。
報告自体、どうでもいいとか?
そんな気すらするのは、氷皇の顔から余裕の笑みが消えてねえから。
まだ結論つかずの報告を咎めることもなく、ただ意味あり気に笑うだけで。
それは櫂も玲も感じ取っているんだろう。
だとすれば、何で氷皇はこの場に俺達を呼んだのか。
何で理事長なんてやっているのか。
「君達はこれから5日間、桜華で過ごして貰います。学年は、面倒だから全員同じ。クラス割りは・・・」
そんな時、ノックと共に現れたのは…イボガエル。
ああ、銅像そっくりの気味悪さ。
「おお、桐夏の交換生徒ですな。私は学園長の三善(みよし)です。……。これはこれは…。ぐへっ」
イボガエルは舐めるように玲を見て、爬虫類のように赤い舌をちろちろ見せる。
「よろしくお願いします、学園長」
玲は冷たい眼差しをしながらも、にっこり微笑む。
「こちらこそ、ぐへっ」
美女と野獣だ。
そしてイボガエルが視線を芹霞に向けた時、櫂が隠すように前に出て。
「紫堂という。よろしく頼む。それでクラス割は?」
射る様な鋭い切れ長の目に、イボガエルはびょこんと飛び上がる。
「し、紫堂の坊ちゃん?」
言い方が気に食わなかったらしい櫂は、更に目を細めた。
「これはこれはよしなに~。弟がいつも世話になってます~。ぐへっ」
さっきからぐへぐへうるせえイボガエルは、櫂に射竦められて顔を変色させながら、懸命に揉み手を始めた。