シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
その時玲が、僅かに目を細めて。
そして徐(おもむろ)に眼鏡を外して、ふわりと微笑する。
ああ、芹霞の血を奪う、色気の大放出。
勿論、何処をどう見ても好色そうなイボガエルはでろんでろんで。
玲はそんなイボガエルに歩み寄り、
「背広のボタンが…外れてますわ? お直ししますね」
外れてねえボタンを瞬時に外して言うからには、玲に何か魂胆があるんだろう。
そして――
「ふふふ、面白いバッチをつけているんですね?
蛇のお腹に…太陽マーク?」
瞬間。
場が張り詰めた。
それは。
俺が拾ったバッチじゃねえか?
「私も欲しいですわ、どちらでお買いに?」
「いいや、これは友達からの貰い物で…」
「どちらからかしら?」
普通。
こんなに聞いてくる奴がいたら、絶対おかしいって警戒するものなんだろうけれど
でろでろイボガエルはそこまで頭が働いていないらしい。
それだけ玲が美女だってこともあるんだろうけど。
「俊樹…上岐俊樹」
"カミキ"
玲は呟いて、目を細めた。
「上岐物産社長の?」
「知っているのか。ええと君は紫堂の坊ちゃんとどういう関係で…婚約者とか何か?」
一体何を妄想して、どんな希望を抱いたのか。
イボガエルを完全無視して、櫂と顔をあわせた玲。
その時、チャイムが鳴って。
「さあ、予鈴だ。
教室に行く時間だ」
氷皇は嘲るように笑った。