シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
教師の制止もきかずに、俺を挟んで玲と煌…横一列に座った俺達に、溢れ返る人の波。
いつも身体を張って俺を守る煌でさえ、いつもの橙色が闇に抑えられて、その野性的に整った精悍な顔の造作が浮き彫りにされるや否や…
「俺を馬鹿にしてるのか!!? 俺に媚びてどうするんだ!!!」
自分の美貌に無頓着な煌。
甘い声で触れてくる女には、非常に警戒する。
特に煌に色目を使う女達は、煌のワイルドな外貌に惹かれるらしく、やたらその鍛えられた逞しい身体に触りたがる。
だから一層煌は、橙色のインパクトと、俺の護衛役として培ってきた凄みによって、女達を威嚇し遠くに突き放してきたのだが、今…いつも以上に煌個人に群がる女達の喧騒と執拗な接触に、怒ると同時に…半ば混乱のようにたじろいでいる様にも見え、いつも程の気迫は見られない。
玲は――…
案の定多くの男達に取り囲まれ、中には女子もちらほら。
匂立つような色気を撒き散らしながらも、芹霞の嫌がるあの笑みで心を開示しない。
煌程の拒みは向けないが、周囲の熱情を受け入れない。
触れられそうな距離にいながら、決して指1本触れさせない。
――それが玲のスタンス。
煌も玲も、こんなにもあからさまに女達を弾くくせに、芹霞だけは触れることを許可している。
否、触れさせようとしている。
"男"を意識させようとしている。
"恋人繋ぎ"。
俺の居ぬ間に、触れ合って。
その特別性を刻み付けて。