シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
玲様は、その視線が警戒対象だと判断され、更には櫂様に向けられているという前提確信の元に、必要以上に櫂様に固執する動きを見せた。
芹霞さんを弾いていたのはそれ故か?
…だが、釈然としない。
接すること自体を意識的に耐え忍んでいるような、そんな辛い顔をしていたのだから…。
そして顔色が悪いのも気になった。
もともと透き通るような白い肌を持つ玲様なれど、血の気がないような青みを感じて。
動きも何となくぎこちないようで。
心臓の調子でも悪いのだろうか。
櫂様や煌は、芹霞さんを遠ざけようとしている玲様の行動ばかりを訝って、それに気づいていないようだけれど。
玲様の表情が憂いて儚げなのは、心情に起因するものだけだとは私には思えず、何か外因的要素があるのではないか…そう思わずにはいられなかった。
ただしまあ…櫂様を狙う不届き者がいたとしても、いつも以上に警戒心を高める玲様が隣にいれば、愚鈍な焦げ蜜柑だけが張り付いているよりも、余程高い確率で櫂様を守ることが出来る。
私は、芹霞さんを守ることを一任されている代わり、近くで櫂様を守れない。
玲様と煌に…託すしかない。
玲様が警戒されていたような、あの視線はまだ付き纏ったまま。
"敵意"の矛先は…こちら側なのかと、私は警戒心を高めた。
ポケットの中には、テディベアから外した黒曜石。
いつでも顕現できるよう、忍ばせている。
そしてまた、それとは別種の視線。
教壇に居る私は、その視線の先…教室の後方に立つ男女を見据えた。
桜華のものではない白い制服。
異分子のくせに堂々たる物腰で、走査する様に教室を…私達を見渡して。
その顔は…能面を被ったように虚ろ。
「自警団…」
芹霞さんがぼそりと呟いた。
まるで監視のような彼らの存在に、教室の生徒は緊張して怯えていた。
ぶるぶる震えている生徒もいる。