シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

その中で、音楽を聴いている強者がいた。


周りが、小声で彼に注意をしているようだが、聞き耳持たず。


ついには自警団が彼の元に歩み、イヤホンを毟り取る。


途端に教室に響くのは、激しいテンポの曲。


記憶ある。


あれは学園祭で、私と煌が歌った…Zodiacの曲。


自警団が音楽再生機器(デジタルオーディオプレイヤー)を奪い取れば、彼は激しく抵抗して奪い返す。


「我らに逆らうものには罰則(ペナルティー)を!!!」


自警団の男は、懐から何かを取り出し、彼の手にそれを押した。


「転送OK」


後方で、自警団の女がそう叫んで男に頷いてみせると、



ガラガラガラ。


後ろのドアが開いて、他の自警団が数人が入ってきて。


Zodiacの曲がまだ流れつづける最中、合図を送る男の元に歩み、音楽を聴いていた生徒の両腕を掴んで、ずるずると教室から引きずり出した。


その間に彼は叫ぶも、誰も助けようとせず。


身体を震わせて、俯く者ばかり。


そんな時声を上げたのが芹霞さんで。


「待ちなさいよ!!!」


芹霞さんは、廊下に出た自警団の元に歩んだ。


「あんた達何様!!?」


芹霞さんは、力で抑える理不尽なことを許さない。


正義感が強いから。


「我らに逆らう気か? 誕生日と名前を述べよ!!!」


「渋谷でもそうだったけど、同じ台詞しかいえないの!!?」


男達は芹霞さんを無視して拿捕した生徒を引き摺って。


「何処に連れる気よ!!?」


しつこく食い下がる芹霞さんが、自警団の1人の腕を掴んだ時、男は上着のポケットから何かを取り出した。


その形はまるで――


「芹霞さんに触れるな!!!」


私は廊下に飛び出し、後方に芹霞さんを庇う。


そして、見据える。


突き出されたのは、万年筆のような長細いもの。


男子生徒の手に押したものよりも長く。


私は――


それに嫌なものを感じた。

< 305 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop