シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
その中で、音楽を聴いている強者がいた。
周りが、小声で彼に注意をしているようだが、聞き耳持たず。
ついには自警団が彼の元に歩み、イヤホンを毟り取る。
途端に教室に響くのは、激しいテンポの曲。
記憶ある。
あれは学園祭で、私と煌が歌った…Zodiacの曲。
自警団が音楽再生機器(デジタルオーディオプレイヤー)を奪い取れば、彼は激しく抵抗して奪い返す。
「我らに逆らうものには罰則(ペナルティー)を!!!」
自警団の男は、懐から何かを取り出し、彼の手にそれを押した。
「転送OK」
後方で、自警団の女がそう叫んで男に頷いてみせると、
ガラガラガラ。
後ろのドアが開いて、他の自警団が数人が入ってきて。
Zodiacの曲がまだ流れつづける最中、合図を送る男の元に歩み、音楽を聴いていた生徒の両腕を掴んで、ずるずると教室から引きずり出した。
その間に彼は叫ぶも、誰も助けようとせず。
身体を震わせて、俯く者ばかり。
そんな時声を上げたのが芹霞さんで。
「待ちなさいよ!!!」
芹霞さんは、廊下に出た自警団の元に歩んだ。
「あんた達何様!!?」
芹霞さんは、力で抑える理不尽なことを許さない。
正義感が強いから。
「我らに逆らう気か? 誕生日と名前を述べよ!!!」
「渋谷でもそうだったけど、同じ台詞しかいえないの!!?」
男達は芹霞さんを無視して拿捕した生徒を引き摺って。
「何処に連れる気よ!!?」
しつこく食い下がる芹霞さんが、自警団の1人の腕を掴んだ時、男は上着のポケットから何かを取り出した。
その形はまるで――
「芹霞さんに触れるな!!!」
私は廊下に飛び出し、後方に芹霞さんを庇う。
そして、見据える。
突き出されたのは、万年筆のような長細いもの。
男子生徒の手に押したものよりも長く。
私は――
それに嫌なものを感じた。