シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「!!!」
気づいたのは――
偶然だった。
いつも通りに振舞われている玲様。
しかし芹霞さんを避けている玲様。
そんな不可解な玲様を見ながら…
私はあることに気づき、人知れず呼吸を整えた。
玲様が芹霞さんを拒まれている理由…
それが判ったような気がしたから。
"誰"なのかは判らないけれど、玲様確かに…櫂様が狙われていたことを知っていたのなら。
だとすれば――
"何故"なのかは予想はつくだろう。
それは完全なる死角。
私しか見えない角度。
私は皆の視線から玲様を隠すように近づいて。
ポケットから黒いハンカチを取り出して。
それを…襟から覗く、玲様の肩にあてた。
「……!!!」
びくん、と反応する玲様。
鳶色の瞳が、私に向けられる。
そこには、強い意志が秘められていて。
私は――
静かに頷いた。
「どうしたよ、桜」
能天気な焦げ蜜柑。
私は玲様の襟元を正し、そして捲り上がった袖を直して上げた。
玲様が…息を飲む音が聞こえてくる。
「汚れを拭いていただけ。女性…だから」
そして私はハンカチを畳んで、ポケットに戻した。