シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
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「どおした、神崎。元気がないな~」
由香ちゃんが顔を覗き込んできた。
「……師匠、かい?」
そして八の字眉で単刀直入。
由香ちゃんは鋭い処があるから、あたしは躊躇うことなく頷いた。
「嫌われたのかな…」
大きな溜息をついて、テーブルに突っ伏した顔をそろりと上げた。
「ん~、そういう"類(たぐい)"じゃなさそうなんだけれど…」
嫌われているという理由以外に、避けられる要素は考えられない。
あの時――
悲鳴と絶叫、そして黄色い声。
あらゆる声音で包まれた授業に、幕を引いたのは自警団で。
何の感慨もない能面のような無表情さで、淡々と目を抉られ血に染まった屍を…複数体制で教室外に連れ出し、そして教室に残る数人が、高校生にあるべき"静寂"を取り戻させ、騒ぎの元凶たる櫂達を渋々…元の教室に返した。
そして数分後には、授業終了を告げるチャイム。
質問攻めになる前に早々に飛び出したあたし達3人は、予(かね)てよりの待ち合わせ場所に決めていた…談話室に逃げ込んだ。
デザイナーが設計したような、凡人では考えもつかない、利便性が理解できない…そんな流動的なテーブルと椅子。
ちょっとした、洒落たカフェのよう。
この中でも注目を浴びるあたし達なのに…櫂達が現れた途端に、お祭り状態になってしまった。
とりあえず自販機にて、紙コップに氷とジュースを入れて飲んでいたから、それを消化しようと、由香ちゃんと炭酸一気のみ。
あたし達の近くには席が1つしか空いて無くて、玲くんの指示により、黒ワンコがこっちに来て座り…玲くんは櫂と隣り合わせで座った。
――芹霞、あの後大丈夫だった?
いつもなら、そう言いながら…絶対にっこりほっこりなのに。
それを聞いてきたのは煌と、こちらに向けられる櫂の視線だけ。
玲くんは、反対側の窓ばかり見ている。