シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
そこでテーブルに突っ伏してしまったあたしに、由香ちゃんが声をかけてきたのだ。


「思い当たることが多すぎて、何をどう謝っていけばいいのか判らないし…」


とにかく、玲くんがこっちを見てくれさえすれば。


土下座なり何なりして、玲くんに仲直りしてと懇願出来るのに。


玲くんは、櫂の隣ばかり居て。

それ以外に顔を向けるのは、窓の方ばかり。


あたしなんて眼中外。

いつも櫂と一緒に居るのに、櫂とばかりいて。


むかむかむか…。


あたしが、恨みがましく詰めた先は――


「お前、どうして櫂にそんな目よ?」


"むにゃむにゃミカン"、などとかいう怪しげなゼリー状の飲み物を自販機から買ってきた煌が、口をむにゃむにゃ動かしながら首を捻る。


何でそんなものが、自販機で販売されているのか判らないし、どうして煌がそんなものを好んで選ぶのかもよく判らないけれど。


「嫉妬に決まっているじゃないか、如月。紫堂が美少女師匠を略奪したような心地なんだろ」

「はあ? …やっぱり、芹霞は"百合"っ気があるのかよ…」

「女同士は拗れると修羅場らしいぞ? 昼ドラ並のドロドロ怨念渦巻いて」

「それ…緋狭姉が好きそうだよな。つーか、緋狭姉…暫く顔見てないな」


ひそひそ、ひそひそ。


由香ちゃんと煌の小声のやりとり。


全部筒抜けだ。


「…煌。誰が"百合"だって!!?」


聞き捨てならない。

"百合"って女×女でしょう!?

いつの間にあたし、そんな疑惑!?



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