シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「そんな私への第一声が"玲くんが冷たいの~"、"玲くんが傍に来てくれないの~"。今まで玲様にさんざん甘やかされていて、世間一般の対応に戻っただけで何ぐだぐだ…」
「世間一般は嫌~。いつも通りのにっこりほっこりの笑顔みないと、この先頑張れる自信ない~」
あたしはまた突っ伏した。
「この贅沢者!!! はあ…だけどあの玲様がねえ。押しても駄目なら引いてみな…かしら?」
「?」
「こんな…恋愛経験値"ゼロ"女に、勝負かける為に"避けた"っていうのも…何か玲様らしくない方法だし。避けた結果、違う男の方に行くかも…という高いリスク負ってまで、そんなことしないような。玲様頭いいんだし」
「???」
「第一玲様は本当に一途だし。私など全然相手にしない程、玲様は誰かさん一筋なのに。紫堂くんや如月くんに猛攻されて諦めた? ありえないな…。だったら、玲様の意思に反して避けるべき事由が出来たってことだけれど…」
ぶつぶつ、弥生は何か言っている。
「弥生…何か今日、大人しい雰囲気だね。髪も…黒く染めたの?」
綺麗な栗毛色が今日は黒いストレートで。
ひっぱったら、その手をはたかれた。
「ウィッグ、鬘よカ・ツ・ラ!!! あんた…あれだけ電話で言ったのに、忘れているのね。今日はこれから合コン、K大坊ちゃんをひっかけるの!!!」
随分なことを…マックで声高らかに言いのけた、弥生の今日の髪型は…清楚な黒髪ストレート。
ナチュラルメイクに、ぷるぷるグロス。
今流行の"捨て犬"風アイメーク。
クールビューティ系を狙っていた彼女にしては、"可愛い"メイクは違和感はあるけれど、元々が美人なら、結局何をしても可愛いものだ。
「最近ね、派手より地味なのが女子高生の価値が上昇してね」
胸ポケットから黒ぶち眼鏡を取り出して、つけた。
「清楚系で行きます」
ああ、まるで玲くんの格好。
弥生も美人だけれど、玲くんには敵わない。
「そうだ。あんた今日、合コン参加しなさい」
それは突然な、意外な言葉で。
「へ?」
あたしは瞬きを繰り返した。