シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
どうしてあたしの切実な相談が、合コンに代わるのかよく判らない。
「1人いじけてぐじぐじ思い悩まず、こういうときはパーッと遊んで憂さ晴らし。丁度1人ドタキャン出てたし、あんた桐夏の神崎芹霞じゃなく、桜華の別人として楽しみなさい」
「い、いやいや。あたし合コンなんてまるで全然これっぽっちも興味ないし。それに今はそれどころじゃ…」
しかし弥生の中では完全決定事項になったらしい。
携帯で"お仲間"に、「代わりが見つかった」と連絡を入れている。
「よし、あんたに"紫堂芹霞"か"如月芹霞"か"葉山芹霞"かどれかを名乗ることを許してしんぜよう。どれ?」
「どれって…何で候補がそれ? とりあえず紫堂は却下。紫堂財閥と同じ名前使いたくない。如月か葉山か…。うーん、勝手に使っても良心咎めないのは、如月かな」
腕を組んで考え、結論を出したあたり…もうあたしは弥生の思惑の中に居て。
「うふふふ。如月くんが居たら絶対飛び上がって喜びそうだけれど…じゃあ、今からあんたは桜華の"如月芹霞"ということで。拒否権はなし。私の相談料は高いんだからね?
さあ、そうと決まったら…化粧化粧。桐夏の神崎芹霞が判らないくらい、可愛く作ってあげる。」
相談に対して、アドバイスらしいアドバイスをして貰っていないけれど、もう何を言っても無駄なような気がした。
しかも今、桐夏の神崎芹霞は可愛くないといわれた気がするけれど…。
合コン、か。
まるで行きたくないけれど。
ちっとも楽しくなんて思えないけれど。
出来れば今すぐ帰りたいけれど。
だけど、少しだけ…思ったんだ。
行き先言わずにいたら――
玲くん…。
心配してくれるかな。
――僕がいないと危ない状況、判ってる!?
怒ってもいいから、いつもみたいに傍にいてくれないかな。
だから――
さっきからブルブル震え続ける携帯の電源を落とした。