シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
玲は改造というものが好きだ。
玲の他の持ち物にも、至る所に仕掛けがあるらしい。
玲はティアラをPCのUSB口に差し込んだ。
恐らくこの教室におけるPCの基本起動方法は、周囲を観察する限りにおいては…横にあるカードリーダーのようなものに学生証を読み取るものであろうけれど、玲に関してはそうした制約などは関係ない。
セキュリティーだのログイン認証などは、玲が持ち歩くUSBメモリ1つあれば解決する。
普通に起動されたWindowsの画面は、玲が何かのコマンドを入力した途端、家で見慣れていた真っ黒い画面へと変わり、入力を促す白カーソルが点滅した。
そこに玲が…音すら立てず、流れるような動きでキーボードを叩いた。
さらさらと…まるでピアノでも弾いているような雰囲気で、英数字が現れては凄まじい早さで上にスクロールされていく。
しかし。
"ERROR"
その一文で、動きが止まってしまった。
「どういうことだ? 造り主である僕を認識している筈なのに、これ以上のアクセスを拒否するなんて」
「バグか?」
「ありえない。もう何年も、僕はアクセスし続けてきたんだぞ?」
鳶色の瞳が細められた。
「防護(ガーディアン)プログラムがおかしいのか?」
そして再びキーボードを叩く。
すると、一文が画面に自動表示された途端、玲の動きが止まった。
"Absence sharpens love."
"逢えないことが愛を高める"
凄く――意味ありげだな、玲。
お前…日頃、引き籠もりながら何してたんだよ。