シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
――助けてッッ!!!
芹霞の声に驚いた俺達は、慌てて階下に走った。
会いたくて仕方が無い愛しい女の悲鳴に、今の状況がどうとか、氷皇にどう思われるかとか…そんなことを考える余裕などなく。
冷たい風が強く吹く――
闇色に覆われた外界。
鉄の臭いが鼻について、俺は思わず目を細める。
マンションの入り口に居たのは、地面に座り込んで泣きじゃくる芹霞と、芹霞が引き摺ってきたのだろう榊の…仰向けに横たわった姿。
意識を無くした榊は血塗れで、地面に血溜まりが拡がっていた。
身体には、何かに切り裂かれたような直線的な傷痕。
鎌鼬(カマイタチ)?
一番の出血元は…顔からのもので。
目の部分から大量に…ドス黒い血が流れていた。
芹霞の手も顔も血塗れで。
「芹霞、怪我してるのか!!?」
昔から、一番に動くのは櫂で。
強張った声を発して、芹霞を胸に抱きながら聞くと、芹霞はぶんぶんと頭を横に振りながら、おずおずと櫂の背中に手を回し、シャツ地をぎゅっと掴んだ。
「あた…しは大丈…夫。彼を動か…したら…ついただ…け」
ぶるぶると、その指先が烈しく震えている。
「ごめ…んなさい、櫂。仕…事なの…に。だ…けど、他に…頼れるの…は思い…つかな…くて」
それを堪えて必死に喋る姿が、あまりにも痛ましくて。
いつも傍にいたはずなのに、肝心な処で離れていたのが悔しい。
どうして傍で守れなかったのか。
どれだけの怖い思いをさせていたのか。
悪い。
本当にごめん。