シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
「この英文表示は、対ハッカー用ので…これ以上無理すれば、PCは自爆するように出来ている。何で正当なるアクセスで、僕が弾かれる? セキュリティーの部分が、何かがおかしい。…何か…微妙に変わっているような」


そして玲はまた、軽やかにキーボードを叩くと、0と1とでびっしりと構成された画面を出した。


0と1の数字だけで、何が判るのか未だに俺には判らないが…少なくともじっくりそれを見て、ああだこうだと意見が出来るあたり…遠坂にも意味が判るのだろう。


「ワームの亜種か?…宿主を必要とするコンピュータウイルスではなく、それ独自が存在できるような…そんなものが混ざっているね、師匠」


頷き会う2人は、そう結論付けた。


「まるで、師匠のプログラムの1部のように偽装して、だけど微妙に変えてきてるね。突然変異型増殖系だね…」


遠坂も目を細めながら、画面に見入っている。


「これはお前の中核をなすものだろう? どうして侵入を許す結果になってる?」


すると玲は、依然強張った面持ちのまま、肩を竦めた。


「さっぱりだよ。これは物理的障害が起因じゃないから、サーバを変えた際のバグとかでもなさそうだ。純粋に、僕のプログラムに寄生しているものだね。

僕のプログラムは、24時間プログラム内を監視して巡回している防護(ガーディアン)プログラムと並列に走っているから、おかしな侵入は許さないはずなんだけれど…。

防護(ガーディアン)プログラムまで、僕をハッカー扱いしてる。

どうしてだ?」


そして玲は、突如立ち上がり、近くの…帰り支度を始めた男子生徒の元に近寄った。


「すみません。ちょっとお願いがあるんですが…」


ふわり。


確信犯的微笑を見せて、まんまと玲はその男子生徒の学生証を手にして戻ってきた。


「師匠、ボク達にも、仮だけど学生証あるじゃないか」


「もし、"僕だから"ということでアクセスが出来なくなっているのなら、僕とは無関係なものでアクセス検証してみるしかない」


電源を一度きり、男子生徒の学生証を一度読み取らせた後、玲は再びUSBメモリを差し込んだ。
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