シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「これで、建前上…彼がアクセスしたことになるばずなんだけれど…」
そして黒い画面に、玲は再びキーボードを叩き込んで。
そして遠坂と共に大きな溜息をついた。
「動くよね。やはり僕だから…プログラムは命令を受け付けないようだ。彼のアクセス権限ではここまでの改良が精一杯だから、根本的解決には至らない」
そして玲は学生証を男子生徒に返すと、少年はのぼせたようにふらふらしながら、教室から出て行った。
煌の怒鳴り声がしたから、恐らく室外待機の煌に思い切りぶつかったのだろう。
「ああ…由香ちゃんにも権限作っておけば良かったな。僕のを使わせるのではなく」
「師匠…困ったことになったね。師匠のアクセス権限なくなったら…メインコンピュータを使うことは出来なくなるじゃないか。今までの"無理"が可能だったのは、師匠のプログラムのサポートがあったからこそで。
一応目に付くワームは、さっき師匠が殺したといえど…全調査したわけでもないし、完全ではない。プログラムの見直しや強化の必要あるけれど、あれだけの規模なら…数日で検証出来ないだろうし。
はあ。次回はアクセスが出来るかどうか…ああ、事態が悪くなっていないことを祈るばかりだね」
つまり。
「…僕が持ちえる情報網が…遮断された」
玲は悔しそうに天井を仰ぐ。
「僕では――芹霞を探し出せない」
玲の端麗な顔は、悔しげに歪まれる。
「今の状態なら…自分で作ったプログラムさえ、動かすには困難だ。プログラム内容を見るだけ、反撃くらう寸前だ。GPS探索は…仮に機能が作動出来たとしても、その結果を受け取れないだろう」
「じゃあどうする? 神崎、また襲われていたら…」
俺がぎりりと歯軋りをした時、遠坂の携帯が鳴って。
「メール…。宮原からだ。タイトルは…"見て見て"」
そして画面を見た遠坂は凄い声を出した。
「紫堂、師匠!!! これ"見て見て"!!」
それは写真で。
1人は宮原。
もう1人は…。
「これ…神崎だよね。お化粧して、髪を縦巻きにしたこの可愛い顔した子、神崎に間違いないよね?」