シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「背景に何かの建物の看板があるな。『TIARA』?」
「きっと…南千住だ」
玲が呟いた。
「知っているのか、それ」
煌の問いに苦笑した。
「最近オープンしたばかりの、有名なデートスポットだからね。喫茶店から何から、全てのテナントはムードたっぷり仕様さ。コンセプトは、"お姫様に夢を"らしいからね、合コン場所でも人気らしいし」
「随分詳しいな、玲。
――!!!
お前、まさか"お出かけ"候補にしようと、下調べしてたんじゃ」
「……。……さあ?」
何で、長い沈黙があった、玲。
やはり玲は、芹霞をまだ諦めていない。
じゃあ何で、そんな思い詰めた顔をしてまで芹霞を拒む?
「……玲」
俺は玲の耳元で囁いた。
「チャンスだとしたら…誰のだ?」
お前の魂胆か?
それとも、お前が戦線脱落した俺にとってか?
または…
芹霞のいそうな居所をすぐにあてた煌か?
玲は、くっと唇を噛んで顔を背けた。
今のこの状況が、玲の"余裕"を崩しているらしい。
笑いなど端麗な顔には浮かんでなくて。
俺は…笑ってばかりいる玲よりも、こっちの玲の方がいい。
剥き出しの感情を見せる玲の方がいい。
俺だって…。
本当の"玲"が見たいから。
耐えて諦める…昔のような姿をさせたくないから。
本当の姿を求めているのは、芹霞だけじゃない。