シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
そんな訝しい思いを抱えながらも、桜華の門を潜って足早に歩く。
「ここから南千住までだと、タクシーより地下鉄の方が早」
俺が言葉を切ったのは。
突然――
「う…ああああああ!!?」
玲が頭を抱えて、仰け反るようにして叫び始めたからだった。
「玲!!? どうした!!?」
「ああああああ!!!
嫌だ、嫌だ嫌だ!!!
僕は、僕は――ッッ!!!」
焦点が合わない鳶色の瞳。
血の気が全く見られない…真っ白な顔。
明らかに――
異常だった。
「行くな…――
僕から…離れて行くなッッッ!!!」
「しっかりしろ、玲!!!」
俺は崩れ落ちる玲を抱きかかえ、片手でその白い頬を叩いたが、完全に正気を失い…絶叫するばかり。
「やめろ、やめろ、やめろッッッ!!!!」
振り乱される長い黒髪。
まるで狂女。
玲が忌み嫌う…母親のように――。