シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

・騙り

*****************


弥生に言われるがまま…南千住まで来てしまった。


駅前に聳(そび)え立つ、円筒状のガラス張りの建物『TIARA』。


恋人がいないあたしでさえ、「恋人と行きたいデートスポット№1」に挙げられている、人気の場所だということは知っている。


……全てが弥生情報だけれど。


その8階の喫茶店は、完全個室制になっていて、合コンでよく使われるらしい。


パステルカラーとレースフリフリで統一された内装。執事とメイドの優雅な給仕。


お酒が置かれる夜は、がらりと妖艶な雰囲気に変わるらしい。


昼間の「お姫様ムード」は、果たして男性陣が喜ぶものかどうか甚だ疑問だけれど、弥生曰く…興奮気味の女の子を"恋する乙女モード"にする効果があるらしい。


所謂"つり橋効果"だ。


環境から攻めるという魂胆…世の男共は、それ程自分に自信がないものなのか。


集まったK大生は…爽やかインテリ系ばかりで、それなりに顔は整っているようだが、当て馬やら盛り上げ系やらも忘れていない。


緑頭でアクセサリーじゃらじゃらのチャラ男やら、どこが顔か判らないぼさぼさ頭をしたオタク男やら。


一方女性陣は、合コン慣れしている女子高生を揃え、清楚系を意識した弥生とは裏腹に、大人びた…まるでいつもの弥生のような、COOLBEAUTY系がほとんど。


肉食獣的な…血走った女生徒の目をみていると、1人異質なあたしは、彼女達との温度差を嘆くしかない。


男達の反応を見てみれば、やはり今は"清楚系"が持て囃されるのか、弥生の作戦勝ちのような気がする。


そんな観察をしていながら、あたしの視線は、テーブルに並べられたおいしそうな焼き菓子と紅茶にも向けられる。


男より食べ物の方が断然興味があるあたし。


やせ我慢して「大人しく」している弥生の分も手を出したら、テーブルの下で足を踏まれた。


「男を見なさい、レベル高いから!!」


小声でそういわれたけれど、どこら辺が"レベルが高い"のか判らない。


極度の美形慣れしたあたしには、普通の美形は"へのへのもへじ"。


ここの女性陣が、何でこんなに目を輝かせているのかよく判らない。


K大ブランド?

それ美味しいの?




< 341 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop