シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
必要以上に高い声音を響かせる女性陣と、興奮気味に上擦る声を放つ男性陣は、それなりに盛り上がっているようだが、その間、あたしは次々に並べられるお菓子に舌鼓。


弥生はあたしを止めるのを諦めたようで、構ってくれなくなった。


インテリ男性陣は、年上風を吹かせて、薀蓄を披露始めた。


「ここ南千住って、昔刑場があったって知ってる?」


必ず1人いる、場をぶち壊す奴。


集団行動が出来ない、場の空気を読めない奴。


「小塚原刑場(こづかっぱらけいじょう)って言って、死体は埋葬じゃなく土を被せる簡易なものだから、周囲に臭気が充満するわ、野犬とかがそれを食い散らかすわで、酷い有様だったとか」


誰が聞きたいと言った、そんな話。


一同黙したことが、彼を勘違いさせたらしい。


「女子高生はこの手の話が好きだね~。怨念渦巻くこの地には、昔から怪奇現象が絶えないらしくてさ「あ、別にいいですから!!」


ゾンビを経験したあたしや弥生以上に、リアルな恐怖は語れまい。


弥生だってまだゾンビの傷を引き摺っているし、何より女性陣が完全引いて…「逃げ」モードに入っているのを見たあたしは、それ以上の話を拒絶する。


「ああ、そうか。君は桜華だもんね。猟奇事件で有名な。どうなの? 死んだイチルが殺しているみたい? まだ続いているんでしょう?」


どうしてもそっちの方に話を繋げたいらしい。


世の女達はこうした怖い話が好きかもしれないが、嫌いな人だっているということをまるで判っていない、自己中心型の男だ。


可哀想に、彼はお持ち帰りは出来やしない。


「知ってる? イチルって占い師でもあって宗教家でもあったんだけれど…会員制の彼女のブログが、今も更新され続けているってこと」


「知りませんけど?」


「俺の確かな筋の情報ではね…そのブログが更新されると、必ず桜華の誰かが殺されているらしい」


インテリKYは得意げに言った。


「どんなこと書かれているんですか?」


「誰のかはわからない占星術(ホロスコープ)。円を12分割して、その中に天文暦に応じた惑星の正確な位置を入れて、その関係を見る…いわゆる星占い。それがブログに表示されたら、多分…そのホロスコープを持つ女性が殺されてるんじゃないかっていう噂」


「初めて聞いた…かも」


玲くんや由香ちゃん、そんなこと言って無かったよな。


玲くんに話しかけられるきっかけを得たようで、嬉しくなった。


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