シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

「ねえねえ、俺…せりちゃんのこと気に入ったんだ」


"せりちゃん"


あたしの怒りの導火線に火をつけた。


「せりちゃん言うな!!! 

馴れ馴れしく触れるな、馬鹿者めが!!!」



緑頭はぽかんとしていて。


そんな時、


「裕吾~、店員が会計のことで話しあるって。お前幹事だろ~?」


緩い口調の声に振り向けば、ぼさぼさ頭のオタク男。


「ええ!? 判ったよ…」


渋々といった感じで、ちらちらあたしを見ながら去っていく緑頭。


その後姿を、あかんべをして見送ったあたしに、


「はい、神崎さん。帰るんでしょ? 宮原さんからプレゼント」


ぼさぼさ頭があたしの鞄を差し出した。



「へ?」


何て言った、この男。


「ん?」


「あたしは…"如月芹霞"で…」


「ああ、だって君は神崎さんでしょ? 桐夏の」


こいつ、何者!!?


「そんな警戒しないでよ~、覚えてない? 土曜日…」


土曜?


何かあったっけ?


「ほらほら、桐夏で数学の~」



「ああ!!! 数学の新任教師!!?」


そう言えば。


このぼさぼさ頭と、喋り方。


確かに、あの時の男だ。


「あれ~、気付いてなかったんだ? 宮原さんは判っていたのに」


嫌に弥生が大人しいと思ったのは、演技ではなく…やりにくかっただけか。
< 344 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop