シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「ねえねえ、俺…せりちゃんのこと気に入ったんだ」
"せりちゃん"
あたしの怒りの導火線に火をつけた。
「せりちゃん言うな!!!
馴れ馴れしく触れるな、馬鹿者めが!!!」
緑頭はぽかんとしていて。
そんな時、
「裕吾~、店員が会計のことで話しあるって。お前幹事だろ~?」
緩い口調の声に振り向けば、ぼさぼさ頭のオタク男。
「ええ!? 判ったよ…」
渋々といった感じで、ちらちらあたしを見ながら去っていく緑頭。
その後姿を、あかんべをして見送ったあたしに、
「はい、神崎さん。帰るんでしょ? 宮原さんからプレゼント」
ぼさぼさ頭があたしの鞄を差し出した。
「へ?」
何て言った、この男。
「ん?」
「あたしは…"如月芹霞"で…」
「ああ、だって君は神崎さんでしょ? 桐夏の」
こいつ、何者!!?
「そんな警戒しないでよ~、覚えてない? 土曜日…」
土曜?
何かあったっけ?
「ほらほら、桐夏で数学の~」
「ああ!!! 数学の新任教師!!?」
そう言えば。
このぼさぼさ頭と、喋り方。
確かに、あの時の男だ。
「あれ~、気付いてなかったんだ? 宮原さんは判っていたのに」
嫌に弥生が大人しいと思ったのは、演技ではなく…やりにくかっただけか。