シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
――え?
その真意を掴めず、思わず眉根を寄せた時、
「申し訳ございません!!!
お許し下さい!!!」
悲鳴のような、メイドの声が聞こえてきた。
尋常ならざる声の響きに、あたしは驚き…その方角を見てみた。
薄く開いたドアから、声は聞こえる。
「どうしたんだろうね?」
タメ語が出て、訂正しようとしたら止められた。
「別にいいから。此処で会ったが百年目って言うでしょ~?」
それ、使い方合っています、数学のセンセ?
「紫堂を敵に回すか!!? ああ!!?」
ヤクザのようなドスの利いた声に、再び視線をドアに戻す。
し、紫堂?
「次期当主であるこの俺を敵に回して、生きていけると思ってんのか、ああ!!?」
次期…当主って……。
か、櫂?
――違う。
すぐさまあたしは頭で否定する。
あたしの櫂じゃない。
声も違うし、何より櫂はあんな品の無い…ヤクザ紛いな声は上げない。
じゃあ誰だ?
次期当主の…櫂の名前を騙る、大それたことをやってのける不届き者は。
男の顔はここからではよく見えないが、ふんぞり返って座っているようだ。
何がおきたのか判らないけれども、推測するならば…メイドの粗相だろう。
メイトは泣き叫んで謝罪しながら、男の前で土下座している。
そしてそんな彼女に、男は何と――
「もっと、頭下げれや」
座ったままで足を振り上げ、土下座しているメイドの頭を…靴を履いたまま踏み潰し…更にぐりぐりと足を動かした。