シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「待てや……」
しかし。
極悪櫂は、すぐ隣に居て。
極悪オーラを放って、あたし達を射竦める。
ダークな、魔王的な威圧感。
思わず滲み出る嫌な汗。
「お前達…何処かで見たような顔だな。
名を名乗れ」
計都も警戒対象に入ってしまったらしい。
計都は諦めたように溜息をついて言った。
「……彼女は如月さん、俺は…
――黄幡計都」
途端、極悪櫂の目がすっと細められた。
「黄幡…計都?」
何度も反芻して、計都をじろじろみて。
「はははは。だったら仕方が無いな。
見逃してやるしかねえじゃないか」
あたしの"如月"姓なんてどうでもいいらしい。
だけどあたしは、どうでもよくはしたくない。
「人に名前を聞いたのなら、お前も名乗れ!!!」
依然計都に襟首つかまれたまま、宙ぶらりんの状態で人差し指を突きつけた。
「ほほう、俺にそんな口をまだ利くか。
死にたいか、娘」
「何処の何様よ、あんた!!!」
「はははははは」
極悪櫂は突然笑い出して。
「勝手に櫂の…"次期当主"を乱用するんじゃないわよ!!!」
すると。
「乱用?」
向けられた目は、ぞっとする程冷たいもので。
「俺は…正当なる者だ」
下卑た薄い笑いを顔に浮かべ、細めた目に宿るは"狂気"。
「馬鹿言わ「失礼しました~、ごきげんよう~」
計都が突然あたしを連れて走り出した。