シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「離せ、離せ!!!
櫂の名を騙る不届き者は、あたしは絶対許さない!!!」
「落ち着こうよ、神崎さん~。無理だって、君は敵わないから~。俺だって草食系だし、喧嘩なんてしたことないし~」
みるからにひ弱そうではあるが、あたしを片手で掴む程の腕力はある。
あたしは、計都という男がよく判らない。
「関わらないほうがいいよ、たとえ本物が君の幼馴染でもさ」
「何で…知ってるの?」
あたしは警戒に目を細めた。
「桐夏で有名じゃないか~。君が居ない間、宮原さんと女生徒の鬼ごっこ中のやりとり聞くだけでも判るでしょう、普通…」
まあ、そうだけれど。
櫂は知っているんだろうか。
早く教えてあげないといけない気がする。
このままだと、紫堂の名が…。
そして携帯を見たら…。
確かにこの人、勝手に赤外線弄るために一度電源つけたんだろうけれど。
不在着信84件
未開封メール59件
見なくても誰からかは判る。
その怒り様がありありと想像出来る。
あたしは再び電源をおとした。
「かけないの?」
「うん。かけたら殺されそう」
「せりちゃーん、せりちゃん、いるぅ!?」
緑頭があたしを探している。
「あ~神崎さん…」
「しっ!! あの緑頭に聞きつけられたらやばいから。此の場では"如月"と…」
「どちらでもいいけど、後ろ…」
「え? 後ろ?」
そう、促されるがままに振り向けば。
「俺が、何だって?」
不機嫌そうな、橙色のワンコが居た。