シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「よう、芹霞。
いいご身分だよな。
こっちは駆けずり回って、汗かきまくって、ひたすら誰かさん探し続けていたのによ?」
随分と――
ご立腹なワンコ。
笑えば愛嬌あるけど、基本強面の煌は…本気で怒ると正直あたしでも怯む。
そんな煌が見ているのは、あたしではなく計都だった。
敵を値踏みして威嚇するように――
煌の目がゆっくりと細められた。
「お前……誰だ?
何気安く、芹霞に触れてんだ?
――ああ!?」
計都が短い悲鳴を上げて、後方に飛びのいた。
「煌!!! この人、土曜日桐夏で会った、田端センセ後任の!!!」
「知るか!!!」
ああ、完全に怒り狂っている。
何とか宥(なだ)めようと、あれこれ方法を考えていた時に、
「いたいた、せりちゃ~ん」
緑色の頭にピアスジャラジャラ。
脳天気な軽薄男が場に現れた。
「…"せりちゃん"、だあ!?」
益々気分を降下させる、短気なワンコ。
更に細く鋭くなる、褐色の瞳。
それはまるで、煌の偃月刀のように研ぎ澄まされていて。
切り刻む、という行為がなくしても、チャラ男の喉笛にくらいは、容易に噛み付きそうだ。