シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

「煌、駄目。桜ちゃん出ない。

呼出音はかかっているけど…」


俺は舌打ちをした。


何だ、あっちは何が起きてる!!?


「…煌、どうしよう…」


泣き出しそうな芹霞を片腕で抱き留め、俺は考える。


「櫂は木場公園に居るって言ってたな、行くぞ」


「だけど…今から行っても…」


「行ってみねえと、判らねえだろうが!!! 今此処でぐだぐだ考えているよりマシだ!!! まず行ってから考える!!!」


俺は櫂みたいに、考えてからの行動は出来ねえ。


脳からの指令を受けて身体が動く時には、いつも取り返しのつかないことになっているから。


そんな愚鈍な俺は、本能の示すものに我武者羅に頼る他なくて。


熟考より直感を。


それが櫂へと続く、最短の道程になると思うから。


「わ、判った。き、木場に行く電車は、ええと…何線だっけ?」


「俺に聞くな!! つーか、電車よりもっと速く行ける方法…」


芹霞抱えて、桜のように屋根伝いで移動するか。

それとも運転手脅して、タクシーで行くか。


刺客が現れれば、それだけ時間ロスだ。


どうする?

どうやれば早く駆け付けられる?


寒空の中での思考は、予想外に俺の頭を冴えさせたらしい。


ここは『TIARA』脇の道。


斜め向いにあるのはコンビニで。


そして俺の目は、1点に釘付けになった。


コンビニの横に停車している…大型バイク。


でかさといい、バッタの進化版みたいなヤケに尖った…急傾斜の形といい、大幅改造していることは間違いない。


嫌味ったらしい、橙色と黒のマーブル模様。


そして大きく筆文字で、"四神会 玄武参上"と書かれていて。


「四神会…玄武…なんか聞いたことあるような。

…まあいいや。借りるぞ」

< 362 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop