シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

キーがぶら下がっていたのを遠目で確認した俺が、すたすた歩いていくと、


「はあああ!!? あれどう見ても、暴走族のバイクじゃないの!!! 煌やばい、やばいって」


「族如きにビビる俺じゃねえよ」


「そりゃああんたは、過去幾つも…暴走族やヤクザ潰して、その道の筋の者達に怖がられているのは知っているけど、でもだからといって、こっちから喧嘩売らなくたって…」


「借りるだけだって。緊急非常事態。困った時はお互い様。持ちつ持たれつ世界は皆兄弟!!」


嫌がる芹霞をバイクまで引き摺り、軽い跳躍をつけてひらりとバイクに跨がった俺は、慌てふためく芹霞を無視してその身体を抱き上げ、後ろに乗せる。


キーを回せば、ドリルが回っているような…どえらい音が鳴り響いた。


「煌、煌!!! 第一あんた、運転出来るの!!?」


「とりあえずは」


ゲーセンで。


唯一火が出ねえ、電子遊戯だから。


それだけは言わないでおいた。


「はああ。櫂の護衛役ともなれば、そんなこともしないといけないのか。……って、煌、多分持ち主!!! 持ち主が出てきた!!!」


ぽかぽか芹霞が俺の背中を叩く。


コンビニから白い袋ぶらさげた…派手な金髪頭の男が、血相変えて飛び出してきて。


「悪ぃ、緊急だからちょい借りるわ。

俺は如月煌、一応」


「き、如月…ええ!!?」


何か言いかける前に、俺は手のグリップを大きく回して急発進させた。


バイクは爆走する。


「やば…やばやば!!! 煌、車体が揺れてる、ぶれてる!!! 前、前に車!!! 本当に運転したことあるんだよね!!?」


芹霞の絶叫と爆音で何言っているのかよく聞こえねえ。


「もう何から何までやばすぎるのよ!!! やばい人からバイクかっぱらった上に、ノーヘル2人乗り!!! しかも改造大型バイク!!! これで無免許だったら、煌ぶっ飛ばして絶縁だわ」


…何言ってるか判らないけど、聞き返すことはやめておいた方がいい予感がした。
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