シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


「え、えええ!!?」


芹霞が声を上げながら、俺を見上げた。


「余所見すんな、バイクを上に!!!」


それを見下ろし怒鳴ると、芹霞は悲鳴のような気合のような不可思議な声を放ちながら、ハンドルを思い切り上に上げ、下降する時間を引き延ばす。


後は、俺が――


顕現した偃月刀。


それをくるくる回しながら、向かわれる刃物を弾き飛ばし、宙返りの要領で制裁者(アリス)の顔面を蹴り飛ばし、更に後方に回って、偃月刀の柄の部分で思い切りたたきつけた。



「ぎゃあああああ!!!」



芹霞の叫び声。


バイクが急降下していて。


俺は制裁者(アリス)を遠くに蹴り飛ばした反動で下降して、


「芹霞、もっと前に移動しろ!!!」


「ええええ!!?」


へっぴり腰の芹霞の後ろから滑り込み、後ろから囲い込むようにしてバイクの上体を起こし、無事に地面に着地させた。



「し、死ぬかと思った…」


呟いた芹霞の髪の毛が、さらりと前方に零れ…白い項(うなじ)が露になった。


どくん。



芹霞が肩で息をする度、さらさらとした髪が逃げるようにして…今まで守っていた、旨そうな首筋を露出させて。


ああ――やべえ。


理性…もっていかれる。


俺は――


芹霞をぎゅっと両手で抱きしめた。
< 366 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop