シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「きゃあ、また野犬の死体!!? これで何匹目かしら!!? 昨夜…野犬の声と何かの絶叫が酷かったわよね…ああ、気味悪い」
俺達の横を過ぎ去っていく、おば様2人連れ。
「それじゃなくてもこの地域は、昔から怨念渦巻く…怪談でお馴染なものだしねえ。そうそう、知ってます? 十思公園の植え込みが荒らされ、掘り返されたような跡があったとか。それが何か悪いもので、それを食べた野犬が狂死したのかしら?」
「じゃあ野犬のと一緒に聞こえた絶叫は、何の?」
「違う野犬とか?」
雑談好きなおば様達を見送りながら、俺は合掌したままの芹霞に声をかける。
「煌も手を合わせなさいよ!!! バチあたるよ!!?」
俺は野犬の死体を芹霞の視界から隠すようにバイクを動かし、言った。
「芹霞、多分それは……」
――なあ…七不思議、どうしてワンコ?
「俺達のせいじゃない」
「え?」
「七不思議の1つに、小伝馬町のものが新たに加わったんだ。昨日今日のごく最近…」
「そ、そういえば!!!あったよね、首なし地蔵の怪って奴…ん?たしか他に何かの声が聞こえたんじゃなかったっけ?」
気づくなよ、ワンコのこと!!!
俺は必死に、芹霞の視界に入らぬよう、ワンコの骸を隠す。
「き、聞こえたんだろ、さっき通行人のおばちゃん噂してたし」
「なんと!!!」
広がる七不思議の犠牲対象…と言っても、古ぼけた石像とワンコだけど。
不可解なこの事象に、意味を持たせるとすれば、それが出来るのは…櫂達だけで。
俺の思考能力では解答を導くことはできねえ。
「行くぞ…」
謎を解ける、櫂、玲、桜…遠坂を、迎えに。
俺は目を細めた。