シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
或る決意 玲Side
 玲Side
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榊の傷は重症だった。


家に施している僕の回復結界と、氷皇の結界の2重補助で、何とか出血はおさまったけれど…物理的損失を補うことは出来ない。


失った片目の代償は大きい。

義眼になるのだろうか。


榊は何処か僕に似て、それ故関わりたくない人種ではあったけれど。


硝子玉のように綺麗に輝いていた、あのアーモンド型の目がなくなるのは――とても惜しい気がした。


榊は氷皇が認める程の実力の持ち主で、そんな榊に深手を負わせられる者がいるなど…現実的には信じ難い話で。


僕達でさえ、真剣勝負をしたとしても…そう簡単にはいかない。


更に一撃で榊を倒し、抉り取ったばかりの眼球を、口にするなど…。


非情な氷皇とて、そんなことはしないだろう。


犯人は…余程の異常者としか思えない。


――蝶々が…


――黄色い外套を纏った奴が…


榊の実力を凌駕する…異常者。


榊は裏世界に生きる者なれば、その世界における治療が必要で。


芹霞が入院していた紫堂系列の病院の、夜間救急口に連れるわけには行かず…とりあえずは僕は、家でできる応急手当と点滴を施した。


「命には別状がない。だけど然るべき処置をしてもらったほうがいいね。何せ…片目を失っているから。僕の手当てにも限界がある」


僕がそういうと、先程駆けつけたばかりの由香ちゃんは、榊の手を握ってぽろぽろと涙を零した。


「熱が酷いから、結界が効いてくるまで寝かしておこう。熱が下がったら、すぐに病院に連れて行こうね?」


僕は由香ちゃんの肩を叩いた。


「向こうにいるから。何かあったらすぐ呼んでね?」


由香ちゃんの悲しみは大きい。


だけど僕がいるために、我慢している。



それが判ったから僕は――


2人を残してそっと部屋を出た。
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