シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
更には、見計らったかのように現われる…
夥(おびただ)しい数の刺客。
私達に考える暇を与えず、玲様を暖かい場所で休ませる暇を与えず…問答無用に次々と来襲してくる。
その強さは大したものではないけれど。
オーナーに無許可で忍び入った建物内での刺客との乱闘は、特に銃撃戦ともなれば、素人をパニックに追い込み、更には苦悶に叫び続ける玲様の声とが、公共デパートだろうとも…私達に長く留まることを許さない。
小さい建物でも大きい建物でも、オーナーに懇願すれば拒まれ、無許可で入り込むだけで速攻追い出され、買い物すら出来ず。
更に櫂様は、あまりにも顔が知られすぎていた。
櫂様の素性を知らぬ者でも、その美貌は目立ちすぎた。
そこに刺客。
完全な営業妨害と、器物損壊になるのは判る。
だけど刺客に狙われる身の上なのはいつものこと。
紫堂が背景にあればこそ、損害の分以上の謝罪と保障は後日きちんとなされ、だからこそ許され続けてきたのだ。少なくとも、東京においては。
しかし今。
何をどうしても、"紫堂"の力は効力がない。
櫂様に向けられるのは、困惑と…嘲りすら見える。
ありえない、扱い。
何かがおかしい。
そんな中においては――
玲様の治療はおろか、休ませることも出来ない。
あの玲様専用のニトロがなければ、玲様の心臓はもたなかった。
これだけ声を上げられて、これだけ身体を痙攣されて。
それでも心臓が動いていられるのは、薬の力のおかげだ。
その効能がどれだけで切れてしまうか、私は判らない。
1分先か…1時間先か。
それまでに。
一刻も早く、玲様を休ませねば。
早く、錯乱を止めねば。