シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

だから私達は――

次の安住の地を求めて流離(さすら)うしかなかった。


この寒空の元、苦しむ玲様を抱えて…浮浪者の如く。


何という屈辱!!!


私でさえそれを感じているのだから、櫂様は殊更強く感じているはずだ。


悔しさが色濃く、端正な顔に現われている。


それを見た私は、そんな顔をさせている自分の無力さに、唇を噛みしめながら、私に出来ること…刺客を素早く一掃することに努めた。


一瞬だって、櫂様達には触れさせない!!!

これ以上、櫂様の負担をかけさせない!!



「桜、東池袋病院に行く」


何度も電話しては断られた、馴染みとなった病院において、院長も事務局長も、逃げたように電話口には出てこなかった。


玲様は登録されたれっきとした医師だ。


本来ならば、ありえない事態。


「俺が、もう――

有無を言わさせない。

どんな手を使っても」


漆黒の瞳に浮かぶは、確固たる強い意志の宿る光。


私達は、丁度目の前に停まったタクシーに乗り込んだ。


「はいはい、東池袋病院ね、了解しましたよ~」


えらく愛想が良すぎる年老いた男だと思ったけれど。


やけに工事中の看板が多く、車は迂回するように遠回りしながらも、確実に池袋に向かっていると…そう信じていた時。


「おい…何で月島方面だ? 真逆じゃないか!!」


助手席の遠坂由香が、青い標識を指差して叫んだ。
< 372 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop