シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
だから私達は――
次の安住の地を求めて流離(さすら)うしかなかった。
この寒空の元、苦しむ玲様を抱えて…浮浪者の如く。
何という屈辱!!!
私でさえそれを感じているのだから、櫂様は殊更強く感じているはずだ。
悔しさが色濃く、端正な顔に現われている。
それを見た私は、そんな顔をさせている自分の無力さに、唇を噛みしめながら、私に出来ること…刺客を素早く一掃することに努めた。
一瞬だって、櫂様達には触れさせない!!!
これ以上、櫂様の負担をかけさせない!!
「桜、東池袋病院に行く」
何度も電話しては断られた、馴染みとなった病院において、院長も事務局長も、逃げたように電話口には出てこなかった。
玲様は登録されたれっきとした医師だ。
本来ならば、ありえない事態。
「俺が、もう――
有無を言わさせない。
どんな手を使っても」
漆黒の瞳に浮かぶは、確固たる強い意志の宿る光。
私達は、丁度目の前に停まったタクシーに乗り込んだ。
「はいはい、東池袋病院ね、了解しましたよ~」
えらく愛想が良すぎる年老いた男だと思ったけれど。
やけに工事中の看板が多く、車は迂回するように遠回りしながらも、確実に池袋に向かっていると…そう信じていた時。
「おい…何で月島方面だ? 真逆じゃないか!!」
助手席の遠坂由香が、青い標識を指差して叫んだ。