シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 


その時の私達は玲様の汗を拭いていて。


彼女に言われるまで、外界の景色を眺めている余裕などなかったから。


遠坂由香の声に、ミラー越しに運転手を見つめれば、男は顔色を変えていて。


だから私は後ろから…運転手の男の首に腕を巻き付けながら、どういうことかと問い質した。


――金、を貰ったんで。豊洲に連れるようにと。


何処の誰に言われたのか、続けて問いかけようとした時。



バアアアン!!



突如発砲音がして…運転手の頭部に銃弾が撃ち込まれた。


外から…ああ、つけられていたのか!!!


遠坂由香がサイドブレーキを引き、急ブレーキがかかったタクシーから、私達が転がるように外に飛び出すと、待ち兼ねていたかのように刺客が溢れ返る。


制裁者(アリス)ではなく、やはり黒服。



一瞥だけで判る。



私の敵じゃない。



私は裂岩糸を指に絡ませた。


沸々としたものが心の奥から涌き起こるのが判る。


それは"怒り"。


私は――


容赦なく…闘った。


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