シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
ふと、昨夜の…神崎家における玲様の言葉を思い出した。


――結局、一縷が教祖をしていた黄幡会が、どんなものかは情報が漏れないんだ。前身はよくある救済神崇拝の新興宗教だったらしいけど、その父親が死んで一縷が後継したら、門外不出の秘密教義になった。それなのに信者は倍増だ、若者中心で。


――その過去から家族関係やら。その全ての情報を徹底非公開の…"カリスマ美女"が演出なら、一縷はかなりやり手だよね。


――うん、唯一、公にしてるのはこのキャッチコピー。父親と同じ教義か別物か、それすら隠匿するって確かにおかしいよな。しかも一縷…占い師だし、それから派生する宗教って何だろうね。


そもそも一縷の占いとは。


――占星術(ホロスコープ)。生まれた日時場所から、その時の惑星の配列を12等分した円に書き込んで、その惑星の位置や角度によって、細かく未来を言い当ててたらしいよ?


――ネットでは妙な噂もあってさ。死んだ一縷の生まれ変わりだという子供が現われ、現黄幡会を統一しているとか。


輪廻。


――だけど師匠。一方では、一縷が桜華生を殺しているんだろ? 生前の肉体が滅んでも、2つの魂って存在出来るものなのかな? 


心霊現象的なことは判らないけれど、遠坂由香の疑問はもっともだ。


輪廻という意味合い通り、1つの魂が過去から未来に流れて巡り巡っているというのなら。


七不思議の猟奇事件は、全くのガセだ。


未来に転生した一縷に、過去の彼女は必要ない。


――どちらかが虚偽だと、言わざるを得ないよね。どちらかが真実だとしたら、だけれど。


あの時の玲様の様子は至っていつも通りで、一夜明けたら今この現状。


「とにかく一縷関係に関しては、全てが謎!!! 黄幡会も謎の集団!!! …偵察兼ねて頼んでみる? "黄幡教"に救い、求めてみる? キャッチコピー通りの宗教なら、何でも願い叶えてくれるぞ!!!」


遠坂由香もいい加減頭にきているらしかった。


口座から何から全て凍結され、何より自らが"師匠"と呼ぶ玲様のこんな扱い。


彼女もめげずに、色々の場所にあたってくれたのに成果がなく。


逃げるように行き着いたのが、木場公園だった。



< 375 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop