シンデレラに玻璃の星冠をⅠ


話し声が聞こえる。


人の気配が増える。


人影が重なり合って揺れ始めた。


「判りましたわ、イチル様」


初めて聞く、舌っ足らずな幼い少女の声も混ざる。



イチル?


イチルは死んだのでは…。



「黄幡会本部へ」



最後にそう言ったのが誰だったのか、


薄れる意識の中では判別出来なかった。



凄く――


聞き慣れた声だと。


そして。


ここで聞いてはいけない声だと。


そう思ったからなのか…。



確かに――


薄れる意識の中で、私は…



"絶望"を感じたのだ。



私は――


「櫂……様…」


一筋の涙を零して…


祈るように、主の名前を口にして…



崩れ落ちた。


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