シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
僕が居間に戻ると、丁度芹霞がシャワーを浴び終わったばかりだったらしく、毛布を被りながらソファの上で蹲っていた。
櫂と煌が、挟み込むように両隣に座り、芹霞に声をかけている。
そして芹霞の両手は、強制的に櫂と煌の手に繋がれた。
2人で芹霞の手を繋ぐということは…それだけ芹霞の震えが酷いということで。
抱える想いはどうであれ…3人は幼馴染。
その結束力の強さは、誰をも弾き飛ばす。
それはよく見る、昔ながらの光景で。
…僕の心を苛(さいな)ます光景。
少し前までは僕とだけに沢山のメールをしていたのに、ふっと気づけば、僕の存在はすぐに薄れる。
今は芹霞の一大事で。
芹霞はまだ震えていて。
こんなことを思うべき時じゃないと判っているのに、どうしても思ってしまう。
3日間の閉塞的環境が、"僕"を刺激する。
――助けて、櫂!!
僕に助けを求めればいいじゃないか。
僕を思い出せばいいじゃないか。
僕はそんなに頼りない?
僕はそんなに影が薄いの?
いつもいつも。
肝心な部分で、芹霞が呼ぶのは櫂の名前。
僕の名前は出てこない。
何処までも無限回廊。
もがいてももがいても、そこに出口はなく。
光が見えたと思っても、それは幻影で。
僕は芹霞の背を追うばかり――。