シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
あたしは慌ててそちらに行き、煌が指差す黒色の携帯を手にした。
間違いない、このストラップ…あたしが上げたティアラ姫。
「桜が…わざと落としたのか? それとも…罠か? しかし何でこんな場所に…。意味ありげに落とすならもっと見つけやすい場所にすれば…。
………。……??
なあ、芹霞…あそこにある建物って何だ?」
煌が指差す先。木々の隙間から、背の高い塔のような建物が見える。
方向的に…豊洲だと思うけれど…。
「何だろう、よく判らないや。ねえそれより、桜ちゃんのこの携帯…」
気になるのは…外面についた血糊。
桜ちゃん…怪我してるの?
じゃああの血痕……。
"約束の地(カナン)"での桜ちゃんを思い出して。
深々とナイフをお腹に突き刺して、出血が止まらなかった桜ちゃん。
久遠がいなかったら、恐らく…今頃桜ちゃんは居ない。
そんな…危ない目に遭っていたら、どうしよう?
助けられる久遠もいないというのに!!!
「さ、桜ちゃん…大丈夫だよね、煌?」
煌は酷く心痛な顔をして、いら立ったように頭を掻いていた。
良からぬことを思っている。
煌の本能はそう感じているのか。
あたしがきゅっと唇を噛み締めた時、再び携帯が震えた。
桜ちゃんが登録していない番号…携帯からだった。
「…敵からのものか?」
煌の目が剣呑に細められた。
「おびき出して…俺達をも一網打尽にしようとする魂胆か?」
ブルブル、ブルブル。
「……だったら。乗るしかないよ、煌。あたし達には、手がかりが少なすぎる!!!」
そうあたしは叫んで、通話ボタンを押した。