シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
僕は溜息をつきながら、台所でホットミルクを作り、芹霞に渡した。
「はい、芹霞。気分落ち着けてね」
心を隠して僕は微笑む。
今は――
"僕"を出すべき時じゃないから。
冷ややかに、向かい側からそれを見つめる氷皇と、何か考え込んだように俯いている桜。
「どうして…蒼生ちゃんがいるの?」
ぼそり。
芹霞が言った。
「あたしがいつも使っていた部屋…どうして青だらけ?」
それは氷皇が、ここがいいと駄々をこねたせいだけれど。
「あたし…やっぱり来ちゃいけなかったね」
黒目がちの大きな目が伏せられた。
「ごめんなさい…」
芹霞はいつもそうだ。
"紫堂"に関係したものに関わることを、極端に嫌がる。
線を引くんだ、自分で。
自分は相容れぬ世界なのだと。
そういうわけじゃないんだ。
芹霞には紫堂に関わる僕達の、汚い面を見せたくないからで。
紫堂が此処まで拡大できたのは、櫂が強引に進めたおかげもある。
強引さは、時に綺麗なものだけではないから。