シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
『今朱貴が迎えに行っているけど…まだ帰って来ない。俺は…危ないからって家待機。そういえば、俺葉山の電話番号聞いていたなって…思い出して。
紫茉は携帯忘れていくし、俺…紫茉を止めることも迎えにも行けないのなら、せめてお前達に伝えることしか出来ないだろ…? 紫茉の…願いでもあるんだし』
ぼそぼそと、何か…不本意そうな声が聞こえてくる。
煌は眉間に皺を寄せて、がしがしと頭を掻いていた。
「煌。あたし、小猿くん信じるよ?」
あたし達にまだ心開いてなくても、紫茉ちゃんを大事に思っている心は判るから。
人を大事に出来る人は、根っからの悪人じゃないと思うから。
「なあ、お前はシロだとしても、皇城自体も無関係なのか?」
煌が電話に向かって言う。
『正直…判らない。俺は…逃げてきてる身だから、中枢の…兄上達の意向はよく判らないんだ。朱貴も何か知っているかも知れないけど、渋い顔したまま言葉濁すし。だから…もしかしたら、という気はあるけれど…はっきり関わっているとも断言できない』
弱弱しい響き。
「…紫茉ちゃんのお兄さんは? 皇城の中枢にいるんでしょう?」
『冗談よせよ!!! あんな…何考えているか判らないふざけた奴に、真剣に聞いてもその答えが本当かどうか自体怪しいし…何より殆ど家に帰ってこないんだ。毎晩女遊びが激しくてよ』
「……。へえ…?」
あたしは、ちらりと煌をみたら、頭を叩かれた。
「俺は、禁欲中!!!」
真顔で、威張って言うことか。
『あいつ…周涅(すぐり)だけは俺、信用できない。いつもへらへらして人を馬鹿にすることだけが生きがいで、更には守銭奴!!! あの金の亡者、皇城勤務なのに堂々と副業してんだぜ!!? 何やってんのか一切口噤(つぐ)んでさ!!! それでもいつも親父の腹心で、大二位たる兄上の直下の…大三位のままなんて、絶対賄賂か何かでのし上がったに違いない!!! 絶対裏がある!!』
随分と…嫌っているらしい。