シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「紫茉ちゃん…本当に"黄幡会"にいるんだね?」
『確認はしていないけどよ、多分…。昨日、紫堂櫂にかけられた不当な圧力のことを、芹霞達に伝えられないのなら、直接黄幡会に訴えに行くと…止める朱貴と大喧嘩してたし。で、学校行くフリして…結局お前達探してて、悟った朱貴が保健室からすっ飛んで行った。紫茉…思い込んだら、止まらないんだよ』
真っ直ぐな彼女。
櫂の為に…あたしの為に…行ってくれたんだろう。
だとしたら尚更――。
あたしは煌を見た。
「ねえ、煌……」
一瞬。
紫茉ちゃんと煌が手を繋いだ場面が思い出された。
紫茉ちゃん…煌が好きなのかな。
煌も…あたしと手を繋いだみたいに、その内紫茉ちゃんと仲良くなっていくのかな。
そう思ったら、凄く苦しくなった。
ああ、何てあたしは卑しい。
仲いい人たちが更に仲良くなったって、いいじゃない。
だけど…何だか割り切れない複雑な思いがあるのは確か。
何かもやもやする。
「何だよ、芹霞?」
黒髪のワンコは、目を細めた。
「……紫茉ちゃんが一緒に居るなら、一緒に助け出したい」
「……」
「……そんな恨みがましい目で睨まないの。紫茉ちゃんのおかげで、情報もらえたでしょう?」
「……」
「一緒に、助けよう?」
もし――。
小猿くんの言う通り、黄幡会が…櫂を窮地に陥れて、此の…豊洲くんだりまで漂浪させたというのなら。
今櫂の身柄は…。
あたしの視線の先には、塔のような建物。
「櫂も黄幡会にいるんだから」