シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

「紫茉ちゃん…本当に"黄幡会"にいるんだね?」


『確認はしていないけどよ、多分…。昨日、紫堂櫂にかけられた不当な圧力のことを、芹霞達に伝えられないのなら、直接黄幡会に訴えに行くと…止める朱貴と大喧嘩してたし。で、学校行くフリして…結局お前達探してて、悟った朱貴が保健室からすっ飛んで行った。紫茉…思い込んだら、止まらないんだよ』


真っ直ぐな彼女。


櫂の為に…あたしの為に…行ってくれたんだろう。


だとしたら尚更――。



あたしは煌を見た。


「ねえ、煌……」



一瞬。


紫茉ちゃんと煌が手を繋いだ場面が思い出された。


紫茉ちゃん…煌が好きなのかな。


煌も…あたしと手を繋いだみたいに、その内紫茉ちゃんと仲良くなっていくのかな。


そう思ったら、凄く苦しくなった。


ああ、何てあたしは卑しい。


仲いい人たちが更に仲良くなったって、いいじゃない。


だけど…何だか割り切れない複雑な思いがあるのは確か。


何かもやもやする。


「何だよ、芹霞?」


黒髪のワンコは、目を細めた。


「……紫茉ちゃんが一緒に居るなら、一緒に助け出したい」


「……」


「……そんな恨みがましい目で睨まないの。紫茉ちゃんのおかげで、情報もらえたでしょう?」


「……」


「一緒に、助けよう?」


もし――。


小猿くんの言う通り、黄幡会が…櫂を窮地に陥れて、此の…豊洲くんだりまで漂浪させたというのなら。


今櫂の身柄は…。


あたしの視線の先には、塔のような建物。



「櫂も黄幡会にいるんだから」


< 391 / 1,192 >

この作品をシェア

pagetop