シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
『ちょっと待てよ、まさか紫堂…黄幡会の奴らに拉致されているのか!?』
「うふふふ、そのまさか。櫂だけじゃない。あんたの大好きな桜ちゃんも、あんたの尻を叩きまくった玲くんも由香ちゃんも。紫茉ちゃんまでも。多分みーんな、黄幡会」
確信があった。
「だからね、助けに行くの。皆を」
『待て待て待て!!! あの紫堂を…葉山を捕えられた奴らに、お前みたいな素人女と馬鹿ワンコが敵うわけないだろう!!? 朱貴でさえ血相変えたのに!! 無理だって、絶対無理!!! それなら朱貴を待てよ。俺、電話して朱貴に一緒に助けるよう必死に頼むから。繋がればの話だけれど…』
慌ててる小猿くん。
やっぱり悪い子じゃない。
「人生にはね、何があっても"可能"にしないといけない時があるの!!! 無理だなんていうのは、死ぬ時だけでいい!!!」
あたしは言い捨てて。
「大事な人が拉致られて。自分だけがのうのうと過ごしているなんて真っ平ごめん。誰かに助けられるのを指咥えてなんて待ってられない。自分で何とかしたいから。
同じよ、紫茉ちゃんと朱貴と」
『……』
「だからあたしは助けに行くの。たとえ、無謀でもね」
『……』
「じゃあ切るよ。情報ありがとうね。紫茉ちゃんや桜ちゃんが無事なこと、祈ってて」
そしてあたしは電話を切り、煌に笑いかけた。
「さあ、櫂を助けに行こうか、煌」
「芹霞、お前さ…」
煌が言い澱み、そして続けた。
「本当に櫂のことになると目の色変わるよな」
…少し苦い顔をして、少し寂しそうに。
「当然。平然と出来る付き合いはしていないもの。判っているでしょ、そんなこと」
「ああ、判ってはいるけどさ…」
そして、空を振り仰ぎながら。
「酷く…妬ける。
――なんて、
言ってる暇ねえんだけどな、はははは」
煌。
そういうあんただって。
凄い目しているよ?
妬けちゃうくらい。