シンデレラに玻璃の星冠をⅠ

腹に鈍痛が響く。



記憶を蘇らせれば。


携帯で芹霞と煌と話していた時…


何か大きな気配を感じた時にはもう…腹を打ち付けられて、崩れ落ちたのだろう。


相手を見極めることも出来ずに、意識を失ったのか…。



情けない。



紫堂の権力も、力をも失った…ただの吊られ人。


無力すぎて、弱すぎて…反吐が出てくる。




玲は、桜は、遠坂は…大丈夫なのか。


傷つけられてはいないか。


元気でいるだろうか。




「はは…本当に情けない…」




力を奪われ、手足を縛られ。



こんな自分を…芹霞に見られなくて良かったと思う。



抗いきれない力に屈服せざるをえない窮状を、

好きな女に見せたくないのはただの男の矜持。


さんざん…あいつの前では涙流してきたのにな。


捨てるな、愛してくれと…懇願したのにな。



それでも、いつでも俺は…


あいつを守るべき"王子様"でいたいから。


いつだって、俺は芹霞にとって、唯一無二の存在でいたいんだ。


芹霞は俺にとって最高のお姫様だから。


俺だって、芹霞にとって最高の王子様にならないといけない。



芹霞が好きだから。


俺は、芹霞以外には見えていないから。


芹霞に相応しい男でいたいんだ。

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