シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「はいはい、こんな時間に誰だろうね?」
和やかな居間の中で、立ち上がったのは白皙の青年。
鳶色の瞳、同色の髪。
どこまでも優雅で気品ある端麗な顔立ち。
ふわりと優しく微笑めば、彼の背景で薔薇の花が一斉に蕾を開き、その芳しき匂いにて相手を虜にする。
しかし眠る気性は激しく、一度刺激されれば"えげつない"。
そんな…20歳の青年の名は紫堂玲(シドウレイ)――2つ名は『白き稲妻』。
インターホン越しで何やら話し込む彼を見て、床から立ち上がったのは17歳の少年。
褐色の瞳、やや猫っ毛の橙色の髪。
2mを僅かに切れる肉体は、日々の基礎鍛錬のおかげかますます野性的な逞しさを見せ、強面の精悍な顔に一層の"男"の磨きをかけている。
「何だ? 新手のセールスなら、俺追い返してくるぞ?」
そんな外貌にそぐわず、心を許した者へは何処か人懐っこい…彼の名は如月煌(キサラギコウ)。2つ名を『暁の狂犬』。
「…番犬」
冷ややかに。ぼそりと呟いたのは、『鬼』と書かれた湯飲み茶碗で煎茶をすする…全身真っ黒いゴスロリ衣装に身を包んだ16歳の…美少女風美少年。
華奢な体躯をしているものの、橙色の少年の弟弟子たる彼の鍛錬成果は、外から見えぬ処に徐々に現れ始めている。
その名を葉山桜、2つ名は『漆黒の鬼雷』。
傍らに黒い目をした灰色のテディベアを必ず置き、トレードマークのツインテールのツケ毛をつけた彼は、いつも通り無表情な顔。
「だ~か~ら~!!! 俺、犬じゃねえよ!!!」
最近頓(とみ)にその名詞に噛み付く橙色の少年に、黒い少年は鼻でせせら笑う。
「噛み付くよりは…"噛ませ犬"…。転職…?」
がっくりと橙色の少年は項垂れる。
少なからず…何か思う処はあったらしい。