シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 

「待て、こら芹霞!!!」


どうして突っ走るかな、この阿呆タレ!!!


俺は芹霞を追いかけて、背の高い塔に赴き…当然ながら、門番のような見張りの制裁者(アリス)を俺が蹴散らし…芹霞はただ走って突っ込んでいくだけ。


すげえ連携のようで、すげえ俺だけ尻拭いさせられているようで。


とりあえず、闇雲に走るな、周りを警戒しろって!!!


不思議な塔だ――。


階段はなく、ずっと坂道のスロープが螺旋状に続くだけ。


出口の見えない1本道。


何かの部屋もなく、ただ壁だけが横に続く。


ここはおかしい。


そうは思えど…でも感じたんだ。


櫂の気配。


居る。


櫂は間違いなく、この塔に居る。


伊達に8年間、櫂の護衛と幼馴染やってきたわけじゃねえ。

あいつの気配なら、俺は判る。


だけど――


それ以外の気配がしないのは何故だ?


別の場所にいるのか?


もし……


同じ場所にいるなら、どういうことだ?


どくん。


心臓が嫌な音をたてた。



そして――


何だ、この甘ったるい匂い。


誰か香でも焚いているのか?


頭が朦朧としてくる。


とにかく、内部に入らねば。


気付けば俺達は、坂を下っていて。


ずっと下っていけば…


「ここ、入ってきた…入り口じゃねえかよ!!!」


俺が倒した制裁者(アリス)がそのままだ。
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