シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「蝶は…飛んでいた、か」
くつくつくつ。
彼の紡いだ単語が、不可解な現実を突きつける。
「黄色い外套を着てたのは…どんな顔だ?」
こくん。
芹霞が唾を飲み込む音が響く。
「仮面…青白い仮面をつけていたの」
「それは面白いことだ」
くつくつ、くつくつ。
「黄衣の…王、か」
それは何か――
含みを持たせたような笑い方で。
その時、ぱっと電灯がついた。
「真っ暗にして何してるのさ」
由香ちゃんだった。
「榊兄の熱が落ち着いたようだから、病院連れたいんだけれど」
「なあ…由香。
幻惑の蝶に誘われる少女の噂は聞いたことがあるか?」
突然の氷皇の問いに、由香ちゃんは顔を顰めた。