シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「え? 何で? だって先刻電話…」
頭が混乱して、ハテナマークしか浮かんでこない。
「危ないから家に居る…って言ってたよね?」
つまり。
此処に居るべき人間ではないのだ、彼は。
すると小猿くんは、少し口を尖らせて…目を伏せ気味に言った。
「お前が…紫茉や…紫堂を助けに行くっていうから。お前が…無理だと判っていても、無謀だと自覚していても。それでも助けに行くと言うから」
そして俯き、藍鉄色の髪をがしがしと掻いた。
「お前…俺信じるって言ってくれたし。俺…口だけの奴になりたくないし…俺だって、助けに行きたかったから…」
そして顔を上げる。
「葉山だって…強くたって女だし。女ってのは弱いから、男が守るのは当然だし。俺…年下だけど男だし。は、ははは葉山のこと…ま、ままま…守ってやりてえし!!!」
どもりながらの強気な口調はいつものことながら。
しかし何処か素直で、何処か雄々しい覚悟がみられて。
藍鉄色の瞳には、凛とした真剣な光が宿っている。
あどけなさ残る端正な顔が、今は嫌に大人びて見えた。
ああ、成長って素晴らしい。
思わずぎゅうをして親愛のちゅうをしたくなったけれど…同時に複雑な気持ちで。
ああ、この子。
女は男に守られるものなんていう…軟弱男が多い現代において、珍しい古風な考えの持ち主だ。
まあそれはいい。
問題なのは…桜ちゃんに入れ込んじゃっていること。
恋故に"男"見せ始め、仄かな色気までをも漂わせ始めた。
ああ――
電話で訂正すれば良かった。
桜ちゃんは男の子だって。
今更実は…なんて言えない。
数秒間煩悶して、結論は1秒で出た。
ごめん、桜ちゃん。
ちょっとの間、性別女でよろしく。