シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「よし。じゃあ一緒に助けよう、皆を。それから。何で壁から出てきたの!!? っていうか此の部屋…壁だらけでどうやって出るの!!?」
「え? 壁…ああ。お前達には見えないんだな、この塔の造り。俺にはこれがあるからさ…」
小猿くんは得意げな顔で、懐からいつぞやの…手の平サイズの鏡を取り出した。
星見鏡、とか言ったか。
「まあ…お前なんか素人女が見ても、きっと目に見えるものと同じものしか映らないだろうが、俺や紫茉は「ええ!!? 何で此処、ちゃんとした小部屋なの!!? というか、小猿くんが腕伸した処って、出入り口…ドアが開けられていたの!!? 壁だったのに!!?」
小猿くんの自慢話を聞かずして、勝手に鏡を覗き込んだあたしは思わず声を上げた。
「何でお前が見えるんだよ!!? しかもそんなにはっきり!!! 俺でさえ、ぼんやりとしか映らないのに。皇城の直系でもないし、北斗の巫女でもないくせに!!!」
「何、北斗の巫女って?」
正直…巫女という名のつくものはもう聞きたくないけれど。
聞き逃すことが出来ない何かを感じたのは事実で。
「皇城の…特別な巫女のことさ。
星見鏡を視れる唯一の女」
「でも紫茉ちゃんも見れるんでしょ?」
「ああ、紫茉がその北斗の巫女。だから大七位」
「北斗の…って何?」
「さあ? 俺もよく知らない。皇城のシークレット巫女。朱貴や周涅辺りは知っているかも知れないけど。紫茉の死んだ母親が北斗の巫女っていうのやってて、死んだから自動的に紫茉が引き継いだだけで、特に何をしているわけでもなく、紫茉自身よく判っていない。なのに大七位…俺より上位なんだぜ?」
ぶつぶつ、ぶつぶつ。
「まあ…完全素人でもないけどな、紫茉の場合は。だけど紫茉以外に…これが視える奴がいるとはなあ」
「それ一体何なの? どうして目で映っているのと違うものが映るの?」
「これは…どんな幻覚をもはね除け、真実を映すと言われている鏡。だから、渋谷で紫茉がこれを視て、蝶の存在が判ったんだ」
だったら――
やっぱり蝶の存在は幻覚ではないんだ。
ということは。
見えないのが幻覚?
それもまた…不可思議な話だけれど。