シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
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鏡で視る世界が真実というのなら。
目で見える景色は、何と曖昧で不確かなものだったのだろう。
1本道だと信じてやまなかった道程は、細やかに分岐する迷路めいたもので、壁一面だと思っていた両横には、何処かの部屋へと繋ぐ扉があった。
錯覚という名の虚構の世界に、あたしは惑わされていたのだ。
単純なもの全てが真実とは限らない。
幻覚に思える複雑な真実もあるんだ。
そんな時、目の前には1匹の小々猿が居て。
あたし達を見つけると、飛び跳ねるようにして手招きした。
主を呼び寄せる使い魔とは凄い度胸だとは思ったけれど、小猿くんは大して気にもしていないらしい。
器が大きいのか、はたまたただ馬鹿なだけか。
「葉山~!!!」
小猿くんがそう叫び出して駆け出す処をみれば、一番早い仕事をしたのが桜ちゃんを探しに行った小々猿で、桜ちゃんを見つけたと訴えているらしい。
言葉は無いのに、そう言っているように思えた。
あたしから見れば、どれも同じような小々猿のうちの1つだけれど、小猿くんには見分けが出来て…一方通行なれど意思疎通は出来ているらしい。
小々猿が指差す壁は、鏡においては扉の位置。
小々猿は、裸眼にてきちんと真実が見えているらしい。
それなりに"力"はあるようだ。
小猿くんは桜ちゃんの名前を呼びながら扉を開き、あたしもそれに続いた。
「――!!!」
そこには、桜ちゃんが居て。
逆さ吊りになっていた。
「桜ちゃん!!?」
足から滴り落ちる真紅が、桜ちゃんの顔を染め…床に血溜りを作り、
「ゆ、由香ちゃん!!?」
目が…抉り取られた由香ちゃんの姿に、あたしは悲鳴を上げた。