シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
 
「やだ…やだやだやだッッ!!!


桜ちゃん!!? 由香ちゃん!!?」



あたしは泣きながら頭を抱えた。



何これ…冗談ならやめて。



身体が震える。


寒くて仕方が無い。



「落ち着けよ、芹霞!!!


――視ろ、鏡を視ろ!!!」



あたしの腕を痛いくらいに掴んで、小猿くんは半ば無理やり鏡をあたしの目の前に突きつけて。


鏡を見ている余裕なんてないと、いやいやするように首を横に振れば、


「由香の所にも小々猿が元気に飛び跳ねている!!! 死んでないから!!! いいから視ろ、視るんだ、見てくれ~!!! お前の方がはっきり視れるんだから!!!」


懇願するような口調になってきた。


あたしは目尻に溜まった涙を手で拭い取り、鏡を見た。



「!!!」


再度良く視た。



「!!!?」


その場所を振り返ってみた。



つまり逆吊りの桜ちゃんと、両目を抉られた由香ちゃんが横たわっている…凄惨な真紅色の場所を。



鏡の中の世界は…


穏やかだった。



目には見えぬ寝台に2人は寝かされていて。


鏡の中の由香ちゃんは、三日月形の目のまま、桜ちゃんの胸をばんばん叩いていて。


寝ぼけている?



「なあ…


葉山…何処にいるんだ?


あのえらく綺麗な男…誰だ?」



小猿くんは酷く真剣な顔をして。



「だけど式が、この部屋に葉山が居ると自信満々で。


俺には視えないんだ、葉山の姿。


なあ、葉山は何処?」


こてん、と首を傾げた。



こいつの頭の中は、桜色だ。


"えらく綺麗な男"が桜ちゃんとは結びついていないらしい。
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