シンデレラに玻璃の星冠をⅠ
「それは"サンドリオン"のことかい? "蝶が現れれば願いが叶う"。 夢見るオトメの都市伝説…意外だな、アンタがそんなこと知ってるの」
サンドリオン?
ネットで最近書き込みが多い、あの噂のことか?
「サンドリオン、サンドリオン…なんか最近聞いたような…」
芹霞がぶつぶつ呟けば、
「呪文みたいだな、サンドリオン…」
煌が褐色の瞳を細めた。
「サンドリオンっていうのは、フランス語での"シンデレラ"のことさ。もう名前からして、思い切りオトメの王道夢物語じゃないか」
由香ちゃんはそう言った。
「"サンドリオン"は、新東京七不思議の1つとされてるんだ。君達は知らないかい? 東京で起きている7つの怪現象のこと。例えば、渋谷のハチ公と上野の西郷サンが連れてるワンコの像が壊されているのが、東京都が野犬を一斉排除した呪いだとか。…ワンコ…」
「おい、何で皆して俺を見るんだよ!!」
「……。女子高生はそういう怪しげなもの、大好きだからね。きっと真実なんてとりとめなく、噂だけが一人歩きしてんだろうさ。だからサンドリオンも…」
途端、芹霞が柏手を打った。
「サンドリオン…思い出した!! 紫茉ちゃんが言ってた奴だ!! 蝶が夢の国に誘って、神隠しに遭うっていう!!? え、じゃああたし…13日以内に確実にお迎え来て、夢の国に連れられるの!!?」
「は!? 神崎、"幻惑の蝶"を見たのか!!? って、まさか榊兄は…」
「犯人は蝶々が変身した黄色奴!! そんでもって、13日以内にあたしを連れに来るって宣言されたの!!」
「はあ!? どうしていきなり、そんなことになってるんだよ!!?」
由香ちゃんが声を上げた時、氷皇は薄く笑った。
「紫堂櫂。チャンスをやろう」
それは何処までも上から目線で。
「明日から13日間、監視を解き"泳がせて"やる。その間の如何なる行動も元老院の名において、不問としてやる。
ただ俺にも立場があるからな。本来休暇明けの榊に任せるはずだった仕事も、同時にこなしてもらおう。
お前達を、榊が復帰するまでの俺の手足とする。それが条件だ」